2012年9月27日木曜日

パナソニック KV-S1026CとKV-S1015Cは次世代の電子書籍自炊ドキュメントスキャナのスタンダードを狙えるのか?


2台のScanSnap S1500を含む、合計3台のドキュメントスキャナを購入し、6,000冊以上の蔵書の電子書籍化を行なってきた管理人ですが、最近少しだけ気になる新製品があります。

それは、パナソニックさんが2012年11月16日に発売する Ractoryシリーズ ドキュメントスキャナ、KV-S1026CKV-S1015C

この2台のドキュメントスキャナは、今までも、業務用向けとして販売価格が10万円を越えるドキュメントスキャナの販売を行なってきたパナソニックさんが始めて販売することになる、個人消費者向けのドキュメントスキャナです。

さて、V-S1026CとKV-S1015Cについて簡単に説明すると、
・両面読み取り対応のドキュメントスキャナ
・KV-S1026Cがやや上位機種
・300dpi設定時
 KV-S1026Cは毎分カラー20枚、モノクロ30枚の読み取り速度
 KV-S1015Cはカラーとモノクロ共に、毎分20枚の読み取り速度 
・超音波による重送検知機能搭載
・重送自体を軽減するアクティブリタードローラー採用
・最大50枚まで一度に給紙トレイに搭載可能
・大きさは共に303 x 137 x 177 mm
・重さは2.7kg
・消耗品寿命は10万枚
といったところでしょうか。

参考リンク:
ドキュメントスキャナー「KV-S1026C/KV-S1015C」を発売
ドキュメントスキャナ Ractory(ラクトリー)KV-S1026C、KV-S1015C
パナソニックさんより)


管理人として一番気になるのは、電子書籍自炊における事実上のスタンダードと言える、富士通さんのドキュメントスキャナ、ScanSnap S1500に対してどれだけの優位性をアピールできるのかということです。

そこで、実際にScanSnap S1500を使い込んでいる管理人が気になるスペックを中心に、 KV-S1026CとKV-S1015Cの2台とScanSnap S1500との比較をしてみたいと思います。

その管理人が実際に気になるスペックとは、
1、スキャンスピード
2、トレイに搭載可能な用紙枚数
3、1スキャンあたりの消耗品コスト
4、Adobe Acrobatシリーズ添付の有無
5、消費電力
6、大きさと重さ

6つ

本来は販売価格も比較する内容に加えたいところなのですが、価格ドットコムさんでの提示をはじめ、直販オンラインショッピングでの予約受付も開始していないため、残念ですが今回は除外しました。

では、それぞれ見ていくことにしましょう。

1、スキャンスピード

スキャンスピードについては、実用的な利用を考え、管理人が標準設定に採用しているカラーでの300dpi設定を元に比較してみます。

ちなみに、なぜカラーを標準として考えるのかというと、やはり、カラーでスキャンを行ったものをモノクロに変換することは容易に可能ですが、モノクロでスキャンしたものをカラーに戻すことは不可能ですから、 データとしてのドキュメントの保存を考えた際は、カラーでのスキャンを行い、素材データとして最善の形で残しておきたいというのが正直な部分です。

ScanSnap S1500     :20枚/分
Ractory KV-S1026C:20枚/分
Ractory KV-S1015C:20枚/分 


2、トレイに搭載可能な用紙枚数(A4:80g/m2条件時)

ScanSnap S1500     :50枚     
Ractory KV-S1026C:50枚   
Ractory KV-S1015C:50枚   

ここまでの比較では3台とも綺麗に横並びとなる結果になりました。


3、1スキャンあたりの消耗品コスト

ここでは条件を揃えるために仮に10万枚の用紙をスキャンした場合の定価ベースでの消耗品コストを計算してみます。

ScanSnap S1500:合計10,185円
パッドユニット(1,995円。5万枚ごと)×2
ピックローラユニット(6,195円。10万枚ごと)×1

Ractory KV-S1026C:合計5,145円
KV-S1026C用ローラー交換キット(5,145円。10万枚ごと) ×1

Ractory KV-S1015C:合計5,145円 
KV-S1015C用ローラー交換キット(5,145円。10万枚ごと) ×1

管理人注:
 Ractoryシリーズのローラー交換キットには給紙ローラーとリタードローラーがそれぞれ一個ずつ含まれるため、消耗品交換にはローラー交換キットのみの購入が必要に。

参考リンク:
ドキュメントスキャナー KV-S1026C別売りオプション
パナソニックさんより)


これらのデータから1スキャンあたりの消耗品コストは
ScanSnap S1500     :0.10185円     
Ractory KV-S1026C:0.05145円
Ractory KV-S1015C:0.05145円
となります。

こうしてみると、2つのローラーをセットにして販売していながら、5,000円台で消耗品交換セットを販売するパナソニックさんのRactoryシリーズの2台が富士通さんのScanSnap S1500に比べ、2倍以上もランニングコストを低く押さえられる結果になることに。

ちなみに、これらの消耗品価格は定価ベースでの計算ですから、実際の販売価格はもう少し安くなりますが、だからといって、ScanSnap S1500のランニングコストがRactoryシリーズのコストパフォーマンスを上回るような事態にはならないでしょう。


4、Adobe Acrobatシリーズ添付の有無

電子書籍自炊を行うのであれば、最低限Acrobat X Standardが手元にあるだけで、可能になる処理が大幅に増えることも事実です。

管理人作成の関連記事:
電子書籍自炊に必要なのはAcrobat X ProとAcrobat X Standardのどちらなのか


また、メーカーさんでは、 Acrobatシリーズ以外のPDF編集ソフトウェアを添付することも多いのですが、PDF自体、Acrobatシリーズを作成しているAdobeさんが作り出したものですから、管理人としては、可能な限り、公式とでも言えるAcrobatシリーズを利用すべきというのが基本的な考え方です。

では、 Acrobatシリーズ添付の有無を比較してみましょう。
ScanSnap S1500     :Acrobat X Standardを同梱
              (Mac版はAcrobat 9 Pro同梱)     
Ractory KV-S1026C:同梱せず
Ractory KV-S1015C:同梱せず


どのようなユーザー層がパナソニックさんのRactoryシリーズを導入するのかによって変わってきますが、実際の販売価格によっては、Acrobatシリーズ添付の有無も含めての商品価値となるため、現時点での評価は難しいというのが正直な部分です。

やはり、管理人のようにすでにAcrobatシリーズを使用しているというユーザーにとっては、添付せずに少しでも販売価格を引き下げて欲しいという考え方もある一方で、初めてドキュメントスキャナを購入するユーザー層にとっては、単体購入では高額になりがちなAcrobatシリーズ同梱は嬉しいのは間違いないでしょうから。

 
5、消費電力

ScanSnap S1500     :
動作時:35W以下
スリープ時:4.5W以下
    
Ractory KV-S1026C:
動作時:17W以下 
レディ:4.5W以下
スリープ:1.6W以下
電源オフ:0.3W以下

Ractory KV-S1015C: 
動作中:17W以下
レディ:4.5W以下
スリープ:1.6W以下
電源オフ:0.3W以下

こうして見ると、圧倒的にパナソニックさんのRactoryシリーズの2台が動作時はもちろんのこと、スリープ時も、ScanSnap S1500に比べ消費電力的に優れていることがわかります。

また、消費電力が少ないということは、ドキュメントスキャナ利用時に発生する熱自体も少ないでしょうから、スキャン時の暑さなどの軽減につながることも十分期待できます。
これはなかなか嬉しい部分と言えますね。


6、大きさと重さ

ScanSnap S1500     :
292mm(幅)159mm(奥行き)158mm(高さ)約3kg
    
Ractory KV-S1026C:
303mm (幅)177mm(奥行き)137mm(高さ)約2.7kg

Ractory KV-S1015C: 
303mm (幅)177mm(奥行き)137mm(高さ)約2.7kg

KV-S1026CとKV-S1015Cでは、スペック上、大きさや重さは同じということになっています。

では実際に比べてみると、ScanSnap S1500に比べRactoryシリーズの2台は
・幅はやや大きいながらもほぼ同等
・奥行きは約2センチほど大きい
・逆に高さは2センチほど低い
・重さは300gほど軽い
という結果です。

300gの重量減は嬉しいと思う一方、奥行きの増加は保管スペースの選択に大きな影響を与えがちですから、素直に喜べないと感じるのも正直な部分です。

もちろん、高さは2センチ低くなっているため、保管時の圧迫感は軽減されることになるのは間違いなのですが、 やや厳しい意見として、ScanSnap S1500は3年前の2009年発売ということを考えて、もう少しパナソニックさんに小型化を頑張ってもらいたいというのが管理人としての感想でした。

参考リンク:
ScanSnap S1500 製品情報
富士通さんより)

ドキュメントスキャナー KV-S1026C詳細スペック
ドキュメントスキャナー KV-S1015C詳細スペック
パナソニックさんより)


以上が、管理人が気になる6つのスペックから見た、 KV-S1026C、KV-S1015C、ScanSnap S1500の合計3台のドキュメントスキャナの比較でした。

こうして見ると、 KV-S1026CとKV-S1015CのRactoryシリーズは、ScanSnap S1500に比べて、消耗品コストで2倍お得で、消費電力的には2倍から3倍優れたドキュメントスキャナということができそうですね。

それ以外の点では、それほど際立った優位性はスペック上からは感じられないというのも管理人の素直な感想でした。

もちろん、パナソニックさん自身も、特長として取り上げる、重送軽減用のアクティブリタードローラーの魅力もある程度理解できます。

しかし、少なくとも管理人の利用環境では現実問題として、 ScanSnap S1500を利用していても、
・適切に消耗品を交換する
・原稿をセットする時にしっかり2回から3回さばく
・原稿の先端を少し斜めにずらしながらセットする
ということを確実に実行している限りでは、重送による途中停止がストレスの原因になることはありません。

参考リンク:
マルチフィード(原稿が重なって読み込まれる現象)を回避するには?
富士通さんより)


そのため、このアクティブリタードローラー搭載が決定的なまでの魅力になるのかというとそうではないというのが今現在の素直な感想です。

管理人注
とはいえ、雑誌などで多用されるような薄くて光沢のある原稿に対しては強力な効果を示す可能性もあるためそういった原稿を多く電子書籍自炊行うユーザーにとっては魅力的な選択肢になる可能性も存在しています


こうして比較してきた上での結論としては、今現在、すでに蔵書の電子書籍化でのScanSnap S1500の活躍に満足している管理人が、新たに KV-S1026CやKV-S1015Cを追加購入することは考えられないということになりました。

また、これから新たにドキュメントスキャナを購入して、電子書籍自炊を行うというユーザーにとっても、 Acrobatシリーズが添付されておらず、 Acrobatシリーズに比べて参考可能な情報の少ない独自ソフトを利用しなくてはならないという意味でも、1台目のドキュメントスキャナとしてはおすすめしにくいと言えます。

もちろん、これから新たにスペックからは読み取れない素晴らしい特長が発表されるのであれば、全く異なる結果になるため、今現在の管理人の予想として、その可能性は少ないのではないかと感じていながらも、パナソニックさんらしいサプライズに期待したいというのも正直な気持ちです。


管理人も愛用のドキュメントスキャナ&裁断機おすすめ購入先リンク:
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追記1:続きの記事を書きました
ScanSnap iX500(FI-IX500)は他のスキャナを過去のものにするのか?ScanSnap S1500後継機の威力を思い知った

追記2:さらに続きの記事を書きました
ScanSnap iX500&S1500 VS 現行6機種?ドキュメントスキャナの6つの気になるスペックを比べてみた


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